2.フェムト秒パルスレーザーってどんなの?

(1)フェムト秒チタン・サファイアレーザー発振器

 私たちの研究室に最初(1999年度)にやってきた、カーレンズ・モード同期方式のフェムト秒パルスレーザー(ロシア・AVESTA PROJECT社製TiF-Kit-100)です。レーザーキット(レーザーのプラモデルみたいなもの)を用いたセミ・ハンドメイドのレーザーですが、安定に動作しています。パルス幅80fs、波長800nm、出力パワー250mW、繰り返し周波数80MHz、パルスエネルギー3.1nJ/pulseの性能を得ています。
 最近は、セミ・ハンドメイドの特徴を活かして、フェムト秒光サンプリング光源として利用するためのレーザー改造及び制御を行っています。

フェムト秒レーザーの外観

フェムト秒レーザーの中身

動作中のフェムト秒レーザー


(2)フェムト秒チタン・サファイアレーザー再生増幅器

 2002年度にやってきたHurricane(米国・スペクトラフィジックス社製)という名前の高出力フェムト秒レーザーです。コンパクトな筐体内にレーザー発振器とレーザー増幅器がセットでおさめられており、上記のフェムト秒レーザー発振器よりも10の5乗倍程度高いパルスエネルギー(1mJ/pulse@1kHz)のフェムト秒パルス光を出力します。

Hurricaneの外観

Hurricaneの中身

 このような高ピークパワーのフェムト秒パルス光を用いると、容易に非線形光学効果を起こすことができます。例えば、レーザー光をレンズで水に集光すると自己位相変調という非線形光学効果により非常に広帯域スペクトルを有する白色コンティニウム光が発生します。また、単に空気中で集光するだけでも光学ブレークダウンにより焦点近傍でのみプラズマが発生します。


(3)極短フェムト秒チタン・サファイアレーザー発振器

 2003年度にやってきたフェムト秒パルスレーザーFemtosourcePro(オーストリア・Femtolasers社製)です。(1)のレーザー同様のカー・レンズ・モードロック方式を利用していますが、分散補償素子としてプリズム対の代わりにチャープミラーを用いることにより、市販レーザーの中では最高クラスの極限に短いパルス幅(10フェムト秒以下)が実現されています。群速度分散によるパルス幅拡がり等扱かなり扱いが難しいレーザーですが、極限の超短パルス幅・超高ピークパワー・広帯域スペクトルは非線形光学や光計測にとって魅力的です。

FemtosourceProの外観

FemtosourceProの中身

FemtosourceProの性能


(4)フェムト秒クロム・フォルステライトレーザー発振器

 2004年秋にやってくる予定のフェムト秒パルスレーザー(ロシア・AVESTA PROJECT社製CrF-65P)です。これまでのチタン・サファイアレーザーと異なり、レーザー媒質にクロム・フォルステライト結晶を用いているため、中心波長1250nmで発振します。この波長帯は生体組織の吸収と散乱特性から『生体の分光の窓』(800nm〜1300nm)の中でも特に浸透性の優れた波長帯とされており、様々な生体光計測への応用が期待されています。


(AVESTA PROJECT社ホームページより)

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