5.散乱光を除去する
生体光計測における大きな問題は、多重散乱光の影響です。生体組織や血液は強い散乱体であるため、光は多重散乱の影響を受けます。一般に、生体計測において測定したい情報は散乱を受けない光(前方直進光)や前方散乱のみを受けた光(スネーク光)に含まれていますが、連続光を用いた測定ではこれらと多重散乱光を分離して測定することは困難でした。
フェムト秒パルス光を散乱体に入射した場合も連続光と同様に散乱の影響を受けますが、散乱の度合いにより光路長に差異が生じるため、結果として出力パルス光は、前方直進光、スネーク光、多重散乱光が時間的に分離して出力されます。したがって、フェムト秒時間分解測定を用いて、前方直進光やスネーク光を選択的に計測することにより、多重散乱光の影響を除去することができます。
この考えは、フェムト秒パルス光を用いた血糖測定の研究で利用しています。