フェムト秒パルス光を用いた血糖測定法


 現在、糖尿病患者はその疑いのある人も含めて1,300万人に上り、実に日本人の10分の1は糖尿病であると言われています。このような糖尿病患者の血糖値測定は、これまで採血を化学分析する手法(酵素法)が用いられてきました。しかし、重症糖尿病患者では1日に7〜8回採血が必要となり、それに伴う精神的および肉体的苦痛や血液感染事故の可能性が問題とされていました。このような背景から非観血的血糖測定法として光学的手法がこれまでにも提案されてきましたが、臨床応用が可能なぐらい成熟度の高い手法は未だ実現されていません。
 我々は、グルコース溶液の群屈折率がその濃度に依存することに注目し、フェムト秒パルス光を用いた血糖測定法に関する研究を行っています。例えば、光路長一定のグルコース溶液サンプルにフェムト秒パルス光を入射した場合、その通過時間は群屈折率すなわちグルコース濃度に依存し、フェムト秒オーダーの時間遅れが発生します(図1)。そこで、フェムト秒光ストップウォッチでこの時間遅れを測定することにより、グルコース濃度の測定が可能になります。さらに、フェムト秒パルス光の多重散乱光除去能力を組み合わせた、多重散乱光除去型血糖測定法の開発を行っています。



図1 測定原理

(参考文献)安井武史、堀泰明、『フェムト秒パルス光を用いた血糖値測定』、光学 Vol. 33 (7)、pp. 259-261 (2004).

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