下記セミナーを開催します。外部の研究者・学生の方も自由にご参加ください。
基礎工学研究科 機能創成セミナー
【日時】2018年3月5日(月)16:30-17:30
【場所】大阪大学豊中キャンパス基礎工学部C棟4階セミナー室(C419室)
【題目】1分子の構造変化が制御する細胞集団のダンススタイル
【講演者】坂根 亜由子(徳島大学大学院医歯薬学研究部生化学分野)
概要:
複数の細胞が互いの細胞間接着によって1つの集団を形成してまとまって運動する集団的細胞運動は、胎生期において重要な役割を果たしており、ダイナミックな細胞集団の運動によって組織・器官は形成されていく。また、組織修復・再生の際にも集団的細胞運動が認められる。その一方で、ある種のがん細胞も同様の運動様式を利用することで周辺組織への浸潤・転移を引き起こすことが知られている。この集団的細胞運動では、先頭の一部の細胞が集団を進行方向に引っ張る牽引力を生み出し、後ろの大部分の細胞が細胞間接着を介して先頭からの指令(牽引力)を隣接する細胞に伝搬して共有するといった力学的バランスによって統率の取れた細胞集団の振る舞いが可能になる。そこには何らかの制御機構が存在していると考えられるが、その実体は明らかではない。我々は、これまでにRabファミリー低分子量G蛋白質のメンバーであるRab13とその標的蛋白質JRABが制御する細胞間接着分子の小胞輸送に注目し、上皮細胞間接着の形成機構についての研究を進めてきた。そのなかでJRABがRab13との結合によってその構造を変化させ、それに伴って新たに生み出される蛋白質-蛋白質間の相互作用が細胞集団内でのアクチン細胞骨格の再編成の時空間的な制御に繋がることを生化学的解析によって明らかにしている。また、JRABの構造変化ができないような変異体が、まるで、阿波踊りやラインダンスのような全く異なるスタイルの集団的細胞運動を引き起こすことを見出し、最も効率のよいバランスのとれた集団的細胞運動にはJRABの構造変化が重要であることを証明した。本セミナーでは、我々が従来の生化学および細胞生物学的解析にバイオインフォマティクス、コンピュータサイエンスやバイオメカニクスを組み合わせた学際的アプローチを持って明らかにしたJRABという1分子の構造変化が制御する集団的細胞運動についてお話ししたい。