6月27日(木)にセミナーを行います。

ご興味のある方はぜひご参加ください。

 

日時: 2019年6月27日(木) 10:40 – 11:30

場所: 大阪大学豊中キャンパス 基礎工学研究棟C棟4階C419室

講師: 大橋 一正 先生(東北大学大学院生命科学研究科分子化学生物学専攻 教授)

題目: 力覚応答におけるアクチン骨格再構築の分子機構とその細胞機能

概要:
私たちの体は様々な機械的な力を受けており、組織を構成する細胞はその力に適切に応答すること(力覚応答)で様々な生理的応答に寄与している。例えば、運動による筋肉や骨の発達、血管の恒常性の維持、組織形態形成、さらには、幹細胞の分化、癌細胞の悪性化にも力覚応答が重要な役割を担うことが明らかになってきた。細胞内アクチン骨格は、細胞の運動や形態を決定する最も基本的な細胞骨格であり、動的な構造であると共に細胞内で収縮力を発生させる主要な構造を形成する。アクチン骨格の再構築は、低分子量G蛋白質Rhoファミリー分子群が特定の構造を形成するスイッチとして働き、その活性化因子(Rho-Guanine nucleotide Exchange Factor;Rho-GEF)がRhoファミリー分子の働きを時空間的に制御していると考えられている。私たちは、血管内皮細胞に対して繰り返し伸展刺激を行うと細胞が伸展方向に対して垂直方向に配向する応答を力覚応答のモデルとして用い、この応答に関与するRho-GEFを探索しRhoAの活性化因子として働くSoloを同定することに成功した。Soloについてさらに解析を進め、Soloは、細胞への張力負荷に対して抵抗する収縮力を発生させるアクチン構造(Actin stress fiber)の形成に寄与することが明らかにした。また、Soloと細胞内で結合する蛋白質を探索し、単層上皮特異的な中間径フィラメントであるKeratin-8/18繊維とSoloが結合していることを見出した。さらに、Soloが、細胞内のKeratin-8/18繊維ネットワークの正常な形成に必要であることを明らかにした。Soloの上皮細胞集団に対する機能を解析した結果、細胞集団移動や3次元培養時の上皮管腔組織の形状に関与することを明らかにした。また、最近、出口研究室との共同研究により、細胞が基質と接着し収縮力を発生させる部位にSoloが集積することが明らかになってきた。本セミナーでは、上記の力覚応答に関与するRho-GEFの発見と機能解析について私たちのこれまでの研究を紹介する。